今回は音大の実技試験におすすめのバイオリン協奏曲(コンチェルト)を6曲紹介していきます。
「実技試験でコンチェルトを弾かないとだけど、なにがいいかな?」
「いろんなコンチェルトの難易度が知りたい!」
「バイオリン協奏曲はいっぱいありすぎて、どれにしたら良いか分からない。」など
自分のレベルに合った試験曲が気になる方は多いと思います。
音大4年生の私が実際に取り組んだことのある協奏曲を中心に、曲のポイントと難易度を紹介していきます。
実技試験で何を弾いたらよいか分からない方はぜひ参考にしてみてくださいね!
ブルッフ ヴァイオリン協奏曲 第1番 Op.26
音大入試や入学したばかりの学生がよく弾いている定番の協奏曲です。
第1楽章
【難易度】★☆☆☆☆
とても短い楽章で、チャレンジしやすいので音大1年生におすすめです。
【ポイント】
冒頭のソロはしっかり歌い、そのあとのフォルテッシモ和音は、はっきりとリズミカルに登場させます。
和音がたくさん含まれるので音程を合わせて、弓もまっすぐに使いよく響くように練習します。
第2主題もとても短いですが、シンプルなメロディーなので歌うのが意外と難しいと思います。
ビブラートや弓の量などを考えながら自分が表現したいように演奏できているのか録音しながら練習してみましょう。
最後の16分音符も確実に弾けるようにリズム練習を行います。
練習することが分からない方は↓の記事を参考にしてみてください!
第2楽章
2楽章はこの協奏曲のメインとして書かれたものです。
【難易度】★★☆☆☆
【ポイント】
どこからか小さく聞こえてくる懐かしいメロディーのような温かさを表現するのがとても難しく、力を入れすぎないように弾くのがポイントです。
大きく派手に弾くところもあるので、最後まで体力がもつようにどこで力を抜くのか考えながら練習しておきます。
遅いテンポの楽章ですが、盛り上がるところは細かい音が多く意外とテンポが速いので転ばないように注意しながら思いっきり表現していきます。
ひとつひとつの音にどんな思いが込められているのか、何を表現したいのかを考えながら大切に弾きましょう。
第3楽章
【難易度】★★★★☆
和音がとても多く、すごく派手で明るい楽章ですが、とても難易度が高いです。
【ポイント】
リズムの取り方をマスターする。
和音の音程が合っていないときれいに響いてくれず、リズムがゆるいとかっこ悪く聞こえてしまいます。
和音をかなりのスピードで弾いていかないといけないので、まずはテンポ通り正しい音程で弾けるようになること、ゆったりした部分は歌いながらも遅くなりすぎず、力も抜いて最後まで弾ききることができるよう体力を温存しておきます。
意外と長い楽章なので、体力配分に気を付けながらカッコよくノリノリで弾ききりましょう。
メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲 Op.64
この曲は色々な音大の入試曲に指定されている定番な協奏曲のひとつです。
この曲は全楽章を通して最高に美しく、ヴァイオリン協奏曲のなかで一番好きな曲です。
バイオリンの良いところが活かせる楽曲で、バイオリンが弾けて幸せだと感じられると思います。
第1楽章
【難易度】★★★☆☆
一小節半しかないとても短い前奏の後すぐに演奏開始なので、出だしから緊張する曲となっています。
【ポイント】
情熱的に歌いながらも、速い音符ははっきりと強めに出すのが第一主題のポイントです。
バイオリンの長い伸ばしの中で、伴奏が先に第2主題を演奏します。
第2主題は本当に温かく柔らかい音で紡いでいきましょう。
愛情をたっぷり注いで、フレーズが切れないように意識すると上手く演奏できますよ。
短いカデンツァの後に出てくる16分音符の連続は、技術的にそんなに難しくないですが、伴奏と一緒に弾くと惑わされやすいため、一人で練習するときも伴奏のメロディーを浮かべながら弾いておきましょう。
第2楽章
【難易度】★★☆☆☆
メロディーが美しすぎて演奏するだけで至福のときを過ごせる楽章になります。
【ポイント】
冒頭から夢のような花園に温かい日差しが降り注いでいるようなイメージです。
そのうち雲行きが怪しくなり小さめの嵐のシーンがおとずれます。
嵐のシーンは技術的にとても難しいため、ゆっくり確認しながら確実に練習し、本番は世界観を自由に表現できるように準備しておきましょう。
2楽章は自分なりにどんな物語にするのか考えながら演奏するとより深みのある表現に繋がると思います。
第3楽章
【難易度】★★★★☆
【ポイント】
始めの嘆きの前奏部分が一番難しいです。
あまりに嘆きすぎても重くなってしまいますし、歌わなすぎるととてもつまらないメロディーになるので何度も録音しながらどういう風に演奏するのか考えましょう。
本編に入ると曲の終わりまでひたすら早い音のみなので、休む暇が全くありません。
呼吸をしっかりしながら、音が重くなりすぎないように、テンポがどんどん速くならないように気を付けて最後まで走り切りましょう。
とても可愛らしい楽章なので音は軽く、強弱を意識しながら作っていきます。
モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第4番、第5番
【難易度】★★★☆☆
モーツァルトの協奏曲は音大に在学している間に一度はやる曲だと思います。
モーツァルトはメロディーがとても明るくシンプルで印象に残りやすいです。
聞いている人からすると簡単に聞こえると思いますが、実はめちゃくちゃ難しい曲となっています。
半分はねたような絶妙な軽さと透明感のある音は、繊細な弓のコントロールが必須でなかなか自分が思い描く音を出すことができません。
音大2~3年生の技術に自信がついた頃に取り組むのがおすすめです。
この曲を通してたくさんの挫折も味わいますし、技術的に大きな成長につながると思いますよ。
【ポイント】
ポイントは軽くきれいに弾くことですが、これが一番難しいので何度も自分の音を聞きながら少しでも理想に近づけるように練習を重ねていきます。
モーツァルトの意外な落とし穴は、カデンツァがとても長く結構難しいという点です。
カデンツァもしっかり構成を考えて、長くてもお客さんが飽きないように工夫しましょう。
チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 Op.35
【難易度】★★★★★
曲が長すぎて試験で全部弾くことは難しいと思いますが、とても素敵でロマンティックな曲なので一度挑戦してみてください。
技術的にとても難しいので、音大生活のまとめとして4年生で演奏する人が多いです。
特に1楽章がおすすめです。
【ポイント】
出だしからヴァイオリニストの表現力が試されるのでとても緊張します。
前奏部分は物凄くたくさん練習しておきましょう。
太くて深い音でヴァイオリンの木のうなりを聞かせ、楽器本体の木から紡ぎ出される温かさを感じながら演奏すると上手くいくと思います。
温かさ、濃厚さが大きなキーワードとなります。
表現が最も大切な曲なので、個性を出して思い切り弾くことがポイントです。
サン=サーンス ヴァイオリン協奏曲 第3番 Op.61
カッコいい曲ですが、伴奏と合わせるのが難しいです。
早い段階で伴奏譜を見ながら、自分が入るところと伴奏のリズムを意識しながら練習しておきましょう。
第1楽章
【難易度】★★★☆☆
【ポイント】
冒頭から力強く良い音で始めます。
G線をよく鳴らし、音程が取りにくいためゆっくりと着実に準備しておきましょう。
エネルギッシュな第1主題のあとは、心の中で強く願うようなうねりのある第2主題が登場します。
第1主題と第2主題を別世界にしていくことがポイントです。
そのあとは転調して第1主題、第2主題が出てくるので、単純な作りになっていますが1回目と2回目の歌い方を変えるなど、表現の工夫をするとより完成度が高く聴きごたえのある演奏となりますよ。
第3楽章
【難易度】★★★☆☆
【ポイント】
カッコいいソロから始まるので、最初がしっかりと決まるように弾きこんでおきましょう。
アレグロに入ってからはリズムをはっきり弾けるように意識します。
リズムがゆるいと違う雰囲気の曲になってしまうので注意です。
疾走感あふれる部分と、壮大な部分を区別して違った表現にするとメリハリがついて良い感じになりますよ。
まとめ
今回は実技試験におすすめなバイオリン協奏曲を6曲紹介しました。
- ブルッフ ヴァイオリン協奏曲 第1番 Op.26
- メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲 Op.64
- モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第4番
- モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第5番
- チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 Op.35
- サン=サーンス ヴァイオリン協奏曲 第3番 Op.61
ヴァイオリン協奏曲は有名なものがたくさんあり、名曲が多いです。
技術や表現を大きく伸ばすことができるので今回紹介したポイントを参考にチャレンジしてみてくださいね!
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